無権代理について

代理人として意思表示をした者が、代理権を有してなかった場合を

無権代理と言います。代理人がした契約の効果は本人には帰属しな、

いことになります。しかし本人が契約の内容が自分に有利な内容だ

ったら無権代理人に代理権を与えたことにしたいと考えます。そこ

で、本人は、追認することができます。追認したことによって、契

約の効果が、原則として、行為をしたときにさかのぼって生じるこ

とになります。追認の方法としては、黙示のものでもできます。

追認の意思表示は、相手方または無権代理人のどちらに対してもで

きます。

1相手方保護の手段

契約の相手方を保護するために4つの制度があります。

①催告権

無権代理人から意思表示を受けた相手方は、本人が追認するかどうか

がはっきりするまでは不安定な立場であるので、本人に対して、相当

の期間内に確答を促す催告をすることができます。この催告権は無権

代理であることを知っている悪意の相手方にも催告権があります。

期間内に本人の確答がない場合は、追認を拒絶したものとみなされま

す。

②取消権

相手方が契約時に無権代理人とは知らずに善意であった場合は、本人が

追認するまでなら、契約を取り消すことができます。

③無権代理人への責任追及権

相手方が本人の追認を得られず、無権代理人の代理権の存在を証明でき

ない場合は責任を追及できます。責任追及をすることができるのは、善

意無過失のときに限ります。無権代理人は相手方の選択によって、履行

責任か損害賠償責任を負います。

④表見代理

無権代理において、外見上代理権があるかのように相手方を信じさせる

ことがあった場合には、無権代理人を真の代理人と誤信した相手方を保

護するために、適法な代理行為と同様の効力を認めたのを表見代理とい

います。表見代理が成立するのに必要な要件は、本人が、第三者に対し

て、ある人を自分の代理人にした旨の表示を示した場合(代理権授与の

表示による表見代理)、代理人が抵当権設定の代理権しか与えられてな

いのに売買契約を結んでしまったなどの例があった場合(権限外の行為

の表見代理)、代理権が消滅した後は、その消滅したことを知らない善

意・無過失の相手方との間に代理行為がなされたとき(代理権消滅後の

表見代理)などが要件になります。これらによって表見代理が成立しま

す。

⑤無権代理に関する判例

本人が無権代理を相続した場合は、無権代理行為は有効とならないた

め、本人は追認を拒絶できます。ただし、無権代理人が相手方に債務

を負担してい場合は、相続人としての本人は、その債務を免れること

ができません。また無権代理人が本人を単独で相続した場合は、無権

代理行為は有効となります。つまり、無権代理人は本人から相続した

追認拒絶権を行使することができないということです。以上が無権代

理に関する判例です。

復代理人について

複代理人とは、代理人によって選任された本人の代理人のことです。

複代理のした行為の効果は選任した代理人ではなく本人に効果が帰

属することになります。

①復代理人の選任と責任

任意代理の場合は、原則として、複代理を選ぶことができないとされ

ています。例外として、本人が復代理人を選ぶことに賛成した場合や

やむを得ない事情がある場合は選任することができます。

法定代理の場合は、いつでも自由に復代理人を選任することができま

す。復代理人がミスをしたときは、代理人はどのような責任を本人に

対して負うのかが問題になります。任意代理の場合は、選任監督責任

として代理人が責任を負うことになります。しかし、本人の指名に従

って選任したときは、その不適任または不誠実なことを知っていて本

人に告げなかった場合等でなければ、代理人は責任を負いません。

法定代理の場合は、代理人が全責任を負うことになります。

②復代理人の地位

復代理人は、代理人の仕事を代理人に代わってするので、復代理人の

代理権の範囲は、代理人の代理権の範囲であり、代理人の代理権が消

滅した場合は、復代理人の代理権も消滅します。

 

 

代理行為の顕名と瑕疵

①顕名

代理行為は、顕名をしたうえで意思表示をする必要があります。

もし代理人が顕名をしなかったら本人に効果が帰属せず、代理人

が自分自身のために、契約したものと扱われます。しかし、契約の

相手方が代理人が本人のために契約行為を知っていた場合は、行為

の効果は本人に帰属することになります。

②代理行為の瑕疵

代理行為において、詐欺、強迫などで意思表示の効力に影響を受ける

ときは、その事実の有無、善意か悪意などは、代理人が基準として判

断されます。これは代理において、代理人がした行為の効果は全部本

人に帰属し、本人自身が強迫や詐欺によって意思表示をしたことにな

るため、本人が取り消すことができることを意味します。

上記の善意か悪意かを判断する場合は、例えば、ある住宅を買うため

に、本人が代理人に買入れを依頼し、代理人が契約をしたがその住宅

に瑕疵があった場合において、代理人は住宅の瑕疵については知らな

ったが、本人は知っていた場合は、本人は売主に瑕疵担保責任を追及

することができるのかが問題になります。この場合は、本人が悪意だ

ったら代理人が善意無過失であったとしても、本人は善意無過失を主

張できないことになります

 

 

 

 

 

無味乾燥な数字の羅列にも歴史あり

仕事が終わった後に本屋に寄り道して新書コーナーに行ってみたら、

興味深いタイトルの本を見つけました。岩波新書の「会計学の誕生--

複式簿記が変えた世界」という本です。会計学という実践的色彩の濃い

学問の成り立ちの歴史を扱った内容になっています。経済学や経営学の

歴史を扱った本は読んだことはあるのですが、簿記会計の歴史を扱った

本は読んだことがないので、タイトルに引かれて買ってみました。

この本によると簿記が誕生したのは13世紀のヴェネツィアやフィレン

ツェ、ジェノヴァといったイタリア北部の都市国家で誕生したとありま

す。それらの都市国家で、活動する商人たちが日々の取引を記録する技

法として誕生したのでした。13世紀の北イタリアで簿記が誕生したので

は無くそれ以前の古代インドや古代ローマの時代が起源であると主張す

る学者もいるそうですがやはりルネサンス期のイタリアが起源であるそ

うです。19世紀に産業革命期のイギリスで貸借対照表と損益計算書を作

成して企業の財政状態の安全性や投資を促すために会計が成立するよう

になりました。貸借対照表や損益計算書に虚偽や不正がないことを専門

の第三者によって証明する方策として公認会計士という職業がイギリス

で誕生したと書いてあります。無味乾燥な数字の羅列である簿記会計が

試行錯誤しながら発展していくという歴史の流れが興味深かったです。

この本の難点としては、簿記会計を学んだことのない人にとっては、専

門用語が多すぎて読みにくい感じがします。もう少し平易に書いて欲し

かったです。ただ会計学の成り立ちを知りたい人にとってはおすすめの

本です。

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自己契約と双方代理の禁止

①自己契約

自分が代理人であるにもかかわらず代理人であることを告げずに、

自分が契約の相手方になることを自己契約といいます。民法では、

原則として、自己契約はだめであり、自己契約を行ったときは、

代理権がないつまり無権代理人となります。これによって本人に

効果が帰属しないことになります。しかし例外として、本人に不利

が生じる可能性がないような場合は自己契約が可能になります。

本人が代理人の自己契約をすることにあらかじめ許諾していたとき

や債務の履行の場合で可能になります。

②双方代理

Aさんから建物売却の代理権を与えられた代理人Bが、同時に買主Cさ

んの代理人にもなった場合が双方代理と呼ばれます。この双方代理に

よって、Aさん、Cさんのいずれか一方だけに、不利益をうけることに

なります。そのため民法では、双方代理が原則として認められません。

つまり、無権代理となります。例外として、上記の自己契約と同様に、

あらかじめ本人の許諾のあるときや債務の履行(例として、登記の申

請)があるときは認められます。

 

 

代理人の種類、範囲、資格、消滅

①代理人の種類

代理人の種類としては、2つあります。任意代理と法定代理があり

ます。任意代理は、自分の意思で、他人に代理権を与える代理です。

法定代理は、法律によって代理人に代理権を自動的に与える代理です。

②代理権の範囲

代理人の権限の範囲は、権限が定められていない場合でも、保存行為、

利用行為、改良行為をすることができます。保存行為は、財産の現状を

維持する行為ことです。利用行為は、物または権利の性質を変えない

範囲内でそれを利用して収益を図る行為です。改良行為は、物または

権利の性質を変えない範囲内で使用価値や交換価値を増加する行為で

す。

③代理人の資格

任意代理人は、行為能力である必要はないと定められています。つま

り、制限行為能力者が代理人として契約を結んでも取り消すことがで

きないことを意味しています。代理人のした契約行為の効果は本人に

効果が及ぶので制限行為能力者が代理人になってもかまわないからで

す。

④代理権の消滅

代理人が代理権を与えられた後に後見開始の審判を受けた場合は、代理

権が消滅します。代理人に選任されたが成年被後見人になってしまった

では、代理を依頼した依頼人としては、代理を任せられるか不安なの

で、代理権を消滅させたほうがいいと考えます。他に代理権が消滅す

るのは、代理人が死亡した場合や破産手続開始の決定を受けた場合で

す。

 

 

他の人に契約を委任する 代理契約

代理とは本人に代わって契約をしてもらう行為のことです。ある

契約を本当は自分でしなけらばならないけど仕事で忙しいから、契約

しにいく余裕がないので他の人に依頼して契約締結をしてもらうこと

が該当します。代理で契約した効果は代理人ではなく代理を依頼した

本人(依頼人)に及びます。本人に契約の効果が帰属する条件として

は、依頼を受けた代理人が正式に代理権を持っている必要があります。

代理権を持っていることによって代理人のした契約行為が本人に効果が

帰属することになります。また代理人が取引や交渉する際に相手方に対

して「自分は、依頼人のために契約を結ぼうとしている」と示すよう

な顕名をし、そして契約する意思表示を行うことによって本人に効果を

及ぼします。

 

 

 

 

心裡留保と錯誤

①心裡留保

当事者の一方が、わざと真意と異なる意思表示をした場合を心裡

留保と呼びます。例えば、AさんがBさんに、売るつもりはないの

に冗談で家屋を売ると言った場合が心裡留保になります。しかし、

BさんとしてはAさんは本気で売る気があると思ってしまうことがあ

ります。そこで民法では、原則としてこの意思表示は有効であると

しています。しかし、BさんがAさんが言ったことは冗談であると知

っていた場合、つまり悪意であるときや注意すれば知ることができた

場合(善意有過失)は、無効になります。心裡留保が無効になる場合

は、善意の第三者に対しては無効を主張することができません。

②錯誤

錯誤とは、言い違い、書き違い、勘違いのこと意味しています。

例えば、Aさんが土地を1000万円で売るつもりだったのに、間違って

100万円と書いてしまった場合は錯誤になります。この場合、100万円

と引き換えに土地を引き渡さなければならないのかが問題になります。

結論からいうと、民法では錯誤による意思表示は、無効であるとしてい

ます。つまり100万円と引き換えに土地を引き渡す必要はありません。

Aさんが、錯誤による意思表示であるから無効であると主張するには、

要素(重要な部分)に錯誤があること、重大な過失(重大な不注意)が

ないという2つの条件が必要です。錯誤によって意思表示をした表意者

が錯誤を認めない場合は、相手方や第三者が表意者の意思に反して無効

主張することができないのが原則ですが、第三者に債権保全の必要があ

り、表意者も要素の錯誤を認めてるときは、第三者は、無効を主張する

ことができます。

今なら課税されないと勘違いして土地を売却するなど、意思表示の動機

に錯誤があるにすぎないときは、その動機が明示または黙示に意思表示

の内容として表示され、それが要素の錯誤に関するときは、無効になり

ます。錯誤によって意思表示をした者は、この無効をもって、善意の第

三者にも対抗することができます。

 

通謀して取引した場合の取り消し

①当事者間での効果

売主Aさんが自己所有の家屋を売る気はないが、債権者に家屋

を差し押さえられないように、買主Bさんに売ること思いついて

Bさんに提案したらBさんが買うことを承諾しました。BさんはA

さんの本心を知っていて、契約しました。つまり虚偽の意思表示

を行い、AさんとBさんがつるんで、通謀したことになります。

これを通謀虚偽表示(虚偽表示)といいます。このような表示は

無効とされています。

②第三者に対する効果

上記の通謀虚偽表示で契約をしたBさんから家屋を買った第三者

Cさんに対して売主Aさんは契約の効果がないことを主張して対抗

することができるのかが問題になります。結論から言うと虚偽表示の

無効は善意の第三者に対抗できません。つまりAさんは家屋を取り

戻すことはできないというわけです。第三者Cさんは、AさんとBさ

んがつるんで契約したことを知らない善意の第三者なので保護する

必要があるからです。通謀虚偽表示をしたAさんは保護する必要はな

いというわけです。善意の第三者は、過失があっても、登記をしなく

ても保護されます。

③転得者

善意の第三者Cさんから家屋を買う契約をする場合、転得者Dさんが善

意・悪意のどちらであっても、家屋はDさんのものになります。

第三者Cさんが悪意の第三者であり、転得者Dさんが善意の場合でもDさ

んのものになります。

 

 

だまされたり、強迫を受けた場合の取り消し

①詐欺

売主Aが買主Bにだまされた場合は、Aさんを守ってあげるために

詐欺による意思表示は取り消すことができます。しかしAさんの取

り消し前に、Bさんが土地を、事情を知らない第三者Cに転売した

場合は、Aさんは取り消すことはできません。善意であるCさんは

保護されるべきと考えられているからです。だまされたAさんは落

ち度があったから善意の第三者であるCさんに対抗できません。

第三者Cさんが悪意である場合は、とり消すことができます。

②強迫

おどされて土地などを売ってしまった場合は、その意思表示を取り

消すことができます。強迫によって意思表示をしたときは、その取

り消しは善意の第三者に対しても対抗できます。また第三者が強迫

した場合は、契約の相手方が善意の場合でも取り消すことができま

す。強迫の場合は、詐欺とは違って、強迫された本人には落ち度が

ないので強迫された者を保護することを優先しています。