根抵当権

根抵当権とは、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するために設定されている抵当権です。(398条の2) 例えば、問屋と小売商との間においては、継続的に取引が行われています。仕入れによって代金債権が発生し、支払いによって消滅するなど、債権債務が発生しては消滅することを繰り返すことになります。いちいち抵当権を設定しなおすのは負担が掛かります。そこで、根抵当権が行われることになります。極度額とは、一定の限度額のことをいいます。不特定の債権といっても、その範囲は限定されるので(398条の2第2項、第3項)、包括根抵当(一切の債権を担保するという根抵当権)は認められません。根抵当権の被担保債権の範囲は、特定の継続的取引契約、一定の種類の取引契約の他、特定の原因に基づいて継続して生ずる債権、手形および小切手上の債権の4種類が範囲になります。

根抵当権者は、確定した元本、その利息、定期金および債務不履行によって生じた損害賠償の全部(最後の2年分に限定されません)につき、極度額を限度として優先弁済を受けられます。(398条の3第1項)極度額の変更は、利害関係人の承諾を得なければすることができません。(398条の5)           被担保債権の範囲及び債務者の変更は、被担保債権の元本の確定前であれば、後順位抵当権者その他の第三者の承諾がなくてもすることができます。ただし、この変更を元本の確定前に登記しなかったときは、その変更をしなかったものとみなされます。(398条の4)   債務者、被担保債権の範囲、契約上で定めた元本確定期日の変更は、いずれも元本確定前であれば利害関係人などの承諾は不要ですが、極度額の変更は、元本確定前後を問わずに利害関係人などの承諾が必要となります。(398条の5)

根抵当権の担保すべき元本については、確定すべき期日(定めた日または変更した日から5年以内であること)を定めることができます。(398条の6第3項) 元本の確定期日前に根抵当権者から被担保債権の範囲に属する債権を取得しても、根抵当権は移転しないので、債権所得者は、その債権の根抵当権を行使することはできません。(398条の7第1項)

元本の確定期日を定めない場合は、根抵当権設定者は、設定後3年を経過すればいつでも確定請求することができ、その請求時から2週間を経過したときに元本は確定します。(398条の19第1項、3項) 根抵当権者の場合は、いつでも確定請求することができ、その請求時に元本は確定します。(398条の19第2項、3項)

根抵当権の元本は以下の事由により確定します。(398条の20)

①根抵当権者が抵当不動産について競売もしくは担保不動産収益執行手続きまたは差押えの申立てをしたとき

②根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき

③第三者による抵当不動産について競売手続きの開始または滞納処分による差押えがあり、根抵当権者がそれを知って2週間経過したとき

④債務者または根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき

 

 

 

抵当権の処分

①転抵当

抵当権者は、他から金融を受けるために抵当不動産を再度抵当に入れることができます。例えば、抵当権者Bが抵当権設定者Aに対する2000万円の売却代金債権のために、Aに対して抵当権を有しているときに、この抵当権をBがCより1500                万円を借りるために、Cへさらに担保に供した場合が転抵当にあたります。                           この転抵当を設定するにあたり、Aの承諾は不要です。ただし、CがAまたは保証人・物上保証人・第三者取得者に対抗するためには、BからAに通知するか、Aの承諾かのいずれかにを要します。(377条1項)

②抵当権の譲渡

抵当権者から無担保債権者に対してなされ、抵当権者と無担保債権者が配当額の範囲内で入れ替わります。(376条1項後半) 例としては、債務者Aの建物を競売して1500万円の代金を得た場合、1番抵当権者Bに1200万円、2番抵当権者Cに300万円の配当になりますが、Bの地位を無担保者D(債権額1800万円)に譲渡すると、Dは1番抵当権者として1200万円を取得します。残りの600万円は無担保のままとなり、Bの1200万円の債権も無担保となります。

③抵当権の放棄

抵当権者から無担保債権者に対してなされ、抵当権者と無担保債権者が配当額の範囲内で同じ立場に立つことになります。(376条1項後半) 例として、1番抵当権者Bの地位を無担保債権者Dに放棄すると一番抵当にある1200万円をBとDの債権額の割合(1200万円:1800万円)で分けることになります。BとDの残りの債権額は無担保となります。

④抵当権の順位の譲渡

先順位の抵当権者から後順位の抵当権者に対してなされ、配当予定額の範囲内で順位が入れ替わります。(376条1項後半) 例として、競売により本来は一番抵当権者Bに1500万円、2番抵当権者Cに2000万円、3番抵当権者Dに競売代金5000万円の残りから1500万円のみ受け取ります。Bが自分の地位をDに順位譲渡すると、競売代金からB・Dが受けられる3000万円を、まずDが債権額2500万円全額、そして残り500万円をBが受けられるように分けます。

⑤抵当権の順位の放棄

先順位の抵当権者から後順位の抵当権者に対してなされ、配当予定額の範囲内で同順位となります。(376条1項後半) 例として、BがDに順位放棄すると、BとDは同順位の抵当権者となり、債権の持分比でわけることになり、同じく競売代金から受けられる3000万円を、BとDの債権額の割合(1500万円:2500万円)で分けます。

⑥抵当権の順位の変更

抵当権者の合意で変更できます。ただし、利害関係人がいるときはその承諾が必要です。順位の変更は登記しないと効力が生じません。