弁済

売買契約において売主が目的物を引き渡すとか、買主が代金を支払うことを弁済と言います。弁済がなされると、債権は目的を達して消滅します。

①弁済の提供

原則として、債務の本旨に従った現実の提供が必要です(493条)。例外として、あらかじめ債権者が受領を拒否している場合、債務者の履行につき債権者の行為を要する場合には、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足ります。弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書(受領書など)の交付を請求することができます。(486条)債務者は、弁済の時から、債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れます。(492条)

②目的物の現状引渡し

不動産の売主の債務のように、特定物の引渡しを目的とする債務の場合には、債権が成立してから引渡しをするまで善良な管理者の注意義務を負います。その注意義務をしていれば(400条)、たとえ引渡しの時までに目的物が債務者の責任でなく破損したとしても、そんままの状態で引渡せばよいです。(483条)破損の原因が債務者の責任よる場合には、債務者の債務不履行となり、損害賠償の責任を負います。

③弁済の場所

弁済の場所は、通常当事者間の意思表示あるいは取引上の慣行で定まります。それでも定まらない場合には、以下の場所で弁済しなくてはなりません。(484条)

1・特定物の引渡しの場合は債権発生の当時その物が存在していた場合

2.特定物の引渡し以外の給付(代金債務など)の場合は弁済するときの債権者の住所(持参債務)

④弁済の費用の負担者(485条)

弁済の費用の負担者は以下の通りです。

1・特約による

2・特約がないときは、債務者が負担する

3.債権者の住所移転などによる弁済の費用の増加分は、債権者が負担する

⑤弁済する者

弁済する者は、以下の通りです

1・債務者

2.第三者(第三者の弁済、474条)

2.の第三者は、自分がなんら債務を負担していないにもかかわらず、自分の名において他人である債務者の債務を弁済することが認められます。(474条1項本文)債権者にしてみると、給付が実現されて債権の目的を達することができるならば、誰が給付するかは、それほど重要なことではないからです。

第三者の弁済が許されない場合は以下の通りです。

・債務に性質が第三者の弁済を許さない場合(474条1項但書)

・当事者が反対の意思を表示した場合(474条1項但書)

・第三者に法律上の利害関係がなく、かつ、債務者の意思に反する場合(474条2項)。これに反し、法律上の利害関係のある第三者は、債務者の意思に反しても弁済することができます

法律上の利害関係のある第三者の例は、以下の通りです。

・保証人(連帯保証人・物上保証人)

・担保不動産の第三者取得者

・借地上の建物の賃借人

単なる親族や友人は、法律上の利害関係人のある第三者とは言えません。

⑥債権者でない者に対する弁済が有効とされる場合

1・債権の準占有者に対する弁済

債権の準占有者とは、例として、債権者でないにもかかわらず、預金証書その他の債権証書と印章を所持し、いかにも債権者であるような振舞いをする者をいいます。このような者に対して弁済者が善意・無過失でした弁済は、有効とされる(478条)。弁済における取引の安全を図るためです。

2.受取証書の持参人に対する弁済

受取証書の持参人が弁済受領の権限を有していなくても、弁済者が善意・無過失でその者に対してした弁済は、有効とされます。(480条)

⑦代物弁済(482条)

本来の給付に代えて、他の給付をすることによって債権を消滅させることを目的とする債権者と弁済者間の契約をいい、債権者の承諾があるときは有効な弁済となります。

⑧弁済の充当(488条)

1.債務者が同一の債権者にいくつかの債務を有している場合、弁済した給付で債務の全部を消滅させることができないときは、弁済者は給付時に、どの債務に充当すべきか指定することができます。

2.弁済者が指定しないときは、債権者(弁済受領者)は、受領時に、弁済された給付をどの債務に充当すべきか指定することができます。ただし、弁済者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、債権者の充当はその効力を失うことになります。

債務者が負担する債務に利息が生ずべきものであるときに、弁済者の弁済額が債務の全部を消滅させることができないときは、まず、利息に充当しなければなりません。(491条1項)

⑨供託(494条)

弁済者が弁済の目的物を債権者のために供託所に寄託して債務を免れる制度をいいます。

供託原因には以下の3つがあります。

1.債権者が弁済の受領を拒んだとき

2.債権者が弁済を受領することができないとき

3.弁済者が過失なく債権者を確知することができないとき

 

 

 

債権の譲渡

①債権の意義

債権譲渡とは、債権をその同一性を保ったまま移転することであり、譲渡できることを原則としますが、以下のことはできません。

1.債権の性質上譲渡が禁止されているとき(466条1項但書)

2・債権者と債務者との間で、譲渡禁止の特約をしたとき

ただし、この特約を知らずに債権譲渡契約をした第三者(善意の第三者)に対しては、譲渡禁止の特約を対抗することができません(466条2項)

債権譲渡は、譲渡人(債権者)と譲受人との間でなされた債権譲渡契約によって行われます。

契約時点ではまだ発生していない将来債権であっても、発生原因や金額などで目的債権を具体的に特定することができれば、譲渡することができます。したがって、譲渡時点でその債権発生の可能性が低かったとしても、譲渡禁止の効力を直ちに否定するものではありません。(判例)

②指名債権譲渡の対抗要件

指名債権とは、特定人を債権者とする債権である。その債権譲渡を受けた譲受人が、その権利を主張するためには、以下のような要件が必要です。

1.債務者に対する対抗要件

・譲渡人から債務者への譲渡通知

・債務者の承諾

のいずれかが必要です(467条1項)。ただし、前者については、譲受人が譲渡人の代理人となって通知しても差し支えはありません。後者の債務者の承諾の相手は、譲渡人または譲受人のいずれかでもよいです。

2.債務者以外の第三者に対する対抗要件

債務者以外の第三者に対抗するためには、債務者に対する対抗要件である譲渡通知または承諾が、確定日付のある証書(内容証明郵便など)によって行う必要があります(467条2項)が、その場合に、債権が二重譲渡された場合の譲受人相互の優劣は、以下の通りになります。

・譲渡人から債務者への譲渡通知の場合は、その通知が債務者に到達した日時の先後

・債務者の承諾の場合は、債務者の承諾の日時の先後

また、債権が二重譲渡された場合に、それぞれについて確定日付のある譲渡通知がなされた場合の譲受人相互の優劣は、確定日付の先後ではなく、確定日付のある通知が債務者に到達した先後で決められます。

確定日付のある証書での譲渡通知・債務者の承諾があったとしても、債務者以外の第三者に対抗することができないものとして、主に以下のようなものがあります。

・債権者代位権(432条)によるもの

・指名債権譲渡の予約によるもの

3・譲渡通知の効力

譲渡通知をしただけにとどまる場合(債務者の承諾がない)には、債務者は、譲渡人に対して生じた事由(弁済・取消・解除・相殺など)をもって譲受人に対抗することができます。(468条2項)

4.債務者の承諾の効力

債務者が意義をとどめないで債権譲渡の承諾したときは、譲渡人に対抗することができた事由があったとしても、これをもって譲受人に対抗することができなくなります。(468条1項)つまり、弁済などによって譲渡人に対する債権が消滅していても、その消滅をもって譲受人に対抗することはできないことになります。なお、譲渡人に対抗することはできます。