第一次世界大戦時のドイツの食糧事情 

今回紹介する本は、「カブラの冬 第一次世界大戦期ドイツの飢饉と民衆」です。この本は、第一次世界大戦期のドイツの食糧事情を解説している本です。第一次世界大戦が始まるとドイツでは、1916年あたりから食料事情が悪化して、飢饉に陥りました。中立国から食料や肥料、飼料などが輸送されるルートがイギリス海軍によって海上封鎖されたことが原因の一つです。海上封鎖されたドイツはこれに対抗できるだけの艦隊を迅速に動員できませんでした。イギリス海軍による海上封鎖だけで食糧事情が悪化したわけではありません。戦時中の食糧政策の誤りが原因で飢饉状態に陥ってしまったとこの本では解説しています。

食糧輸入大国だったドイツ

パン用穀物や飼料はアメリカ、カナダ、アルゼンチンなどから輸入しており、チリからはチリ硝石、ペルーからグアノ(海鳥の糞の堆積物)を輸入していました。チリ硝石とグアノはいずれも肥料の原料になるものです。痩せた土地が多いドイツでは農地の生産性を保つのに重要な物でした。主食の原料である小麦もアメリカ、ロシア、アルゼンチン、カナダ、ルーマニアから輸入していました。第一次世界大戦が始まると、ロシアがドイツの敵国になり、アメリカ、カナダ、アルゼンチンの小麦はイギリス海軍の海上封鎖によって輸入量が激減しました。中立国であったルーマニアも、1916年8月17日に連合国側に加入したため輸入が途絶えました。戦争が始まる前に食糧の輸入ルートが封鎖された場合の有効な対策を想定しないままドイツは戦争に突入してしまいました。

農業生産力の減退

戦時中のドイツの穀物やジャガイモなどの生産量が減少しました。農業の生産力が減少した理由は畜力、人力、肥料の不足が原因でした。農作業にはまだ馬や牛などを使う必要がありました。ドイツでは英米ほど農業の機械化が進んでいませんでした。戦争が起こると100万頭の馬が軍馬として徴発されました。不足した畜力を機械が代わりの動力として期待されましたが機械の材料が兵器生産に回されるのが優先されたためにそれも困難でした。人力は、人手不足のことを指します。農作業の現場にいた人手が軍隊に徴兵されたために農村の労働力が減少しました。人が減ると、土地は深く耕されなくなり、種子の生育が悪くなります。生育中の管理も行き届かなくなります。このため、生産力の減少に拍車をかけました。肥料の減少も致命的でした。土壌養分の三大要素である窒素、リン酸、カリのうちカリ以外は、不足していました。窒素とリン酸は、輸入に頼っていました。窒素は、空気中の窒素を人工的に固定する技術によって人工的に作ることができるようになりましたがこの技術が火薬生産に転用されたため肥料の生産は増えませんでした。これらの原因によって農業生産力は減退したのでした。

食糧の悪化によって治安悪化、そして敗戦に向かう

イギリス海軍の海上封鎖やドイツ政府の食糧政策の失敗によって、ドイツ国内は飢饉になりました。食糧の不足によって闇市が発生したり、暴動が頻発したり、青少年の犯罪増加や栄養失調による餓死が増加しました。やがて食糧の不足による不満がドイツ革命を起こす原因の一つとなり、そして敗戦へと繋がることをこの本では締めくくています。

 

カブラの冬―第一次世界大戦期ドイツの飢饉と民衆 (レクチャー第一次世界大戦を考える)

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