抵当権の意義と性質

1・抵当権の意義と性質

抵当権者は、債務者または第三者(物上保証人)に占有させたまま、不動産を担保として提供を受け、債務が弁済されない場合は、その不動産を競売して得られた代金から他の債権者に優先して弁済を受けることができます(369条1項)。

2・抵当権の設定

抵当権は、債権者と抵当権設定者間で抵当権設定契約を締結することによって生じます。抵当権の目的となるものとして、民法は、不動産、地上権、永小作権を定めます(369条)。 抵当権を設定した後でも、抵当権設定者は、抵当権者の承諾などを得ずに、当該抵当権設定物を自由に使用、譲渡または賃貸することができます。

3・被担保債権の範囲

①抵当権者が競落代金から優先的に、元本の他抵当権実行の費用などについて弁済を受けることができるが、利息その他の定期金は満期となった最後の2年分までと制限されます(375条)。この制限は後順位抵当権者や無担保の債権者を保護するためであるから、そのような債権者などがいた場合には、2年分を超える分も弁済を受けることができます。

②普通抵当権の被担保債権は、現に成立する債権の他、期限付債権、条件付債権など、将来発生する債権でもよいです。判例では、工事終了時に発生すべき報酬金債権全額につき完成前に抵当権を設定することや、保証人の求償権といった将来成立すべき条件付債権にも抵当権の設定を認めています。

③質権の被担保債権の範囲は、抵当権の被担保債権の範囲よりも広いです。すなわち、元本、利息、違約金、質権実行費用、質物保存費用、その他の損害賠償金を担保します。(346条)抵当権のように、利息などについて満期となった最後の2年分に制限されません。

4・抵当権の効力の及ぶ目的物の範囲

①抵当不動産(抵当権が設定された不動産)に付加して一体となっている物(土地の石垣や建物の造作)にも及びます。(370条)

②建物に抵当権が設定された場合には、反対の意思表示がない限り、設定当時から建物に備え付けられていた債務者所有の動産(畳、建具など)にも、抵当権の効力が及びます。(判例)

③土地と建物は不動産として別物件なので、土地に抵当権を設定したときは、抵当権の上にある建物にその権利は及びません。(370条)

従物については、抵当権設定当時までに存在した従物に及びます。また、果実(賃料、地代など)については、被担保債権に債務不履行が生じた後に生じた果実には、抵当権の効力が及びます(371条)。

 

先取特権と質権

1 先取特権とは

法律で定める特定の債権を確実に回収するために、当該債権者が債務者の財産から他の債権者に優先して弁済を受けることのできる担保物件をいいます。(303条)

先取特権の種類

①一般先取特権

債務者かの総財産から優先弁済を受けることできる先取特権です。(306条)

②特別先取特権

動産の先取特権では債務者の特定動産から優先弁済を受けることができます(311条)。

不動産の先取特権では債務者の特定不動産から優先弁済を受けることができます。(325条)

先取特権の順位

一般先取特権が競合する場合は、306条に掲げた順序に従って優先的に弁済を受けます。(329条1項)

一般先取特権と特別先取特権が競合する場合は、特別先取特権を優先します。ただし、共益費用の先取特権(一般先取特権)は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有します(329条2項)。

動産の先取特権が競合する場合は、保護する必要性の大きいものから順次優先します。(330条)

不動産の先取特権が競合する場合は、325条に掲げた順に優先弁済を受けます(331条1項)。

不動産の先取特権と抵当権の優劣は、不動産保存の先取特権の場合では、保存行為完了後、登記をすれば、先に設定か登記されている抵当権にも優劣します(337条、339条)。 不動産工事の先取特権の場合は、不動産保存の先取特権のやり方と一緒です(338条、339条)。 不動産売買の先取特権と抵当権では、登記の先後で優劣が決まります(340条)。

2 質権

質権者が債権を担保するために債務者または第三者から受け取った物を占有し、もし債務が弁済されない場合には、その物を競売して優先的に弁済を受けることができる担保物件のことです。(342条)。

①質権設定契約

質権者(債権者)と質権設定者とで締結されます。質権設定者は債務者でも第三者(物上保証人)でもよいが、意思表示だけでは足りず、質物の引渡しがないと効力が生じません。(要物契約) (344条)。質権者には、善管注意義務があります。

②流質契約の禁止・転質

質権設定契約や債務の弁済期前の契約での流質(質権者に弁済として質物の所有権を取得させること)は認められません(349条)。質権者は、他から金銭を借りるために、その権利の存続期間内において、自己の責任において質物を再度質入れすることができます。これを転質といいます(348条)。

③動産質の特則

質権設定者の承諾がないと使用・収益することができません。(350条、298条2項) 第三者に対抗するためには、継続して質物を占有する必要があります。(352条)

④不動産質の特則

質権者は、質権設定者の承諾なく使用・収益することができるが、質権の目的である不動産の用法に従って行うこととされています。(352条)

使用・収益した場合は、管理費用その他不動産に関する負担を負います。(357条)

質権者は、原則として債権の利息を請求できません。(358条)使用・収益することが可能だからです。

不動産質権の存続期間は、10年を超えることができません。更新する場合も同様です。(360条)

第三者に対抗するためには、登記が必要です(177条)。

 

 

 

 

担保物件の効力・性質

担保物件とは

担保物件とは債務者が債務を履行できなかった場合に備えて、債権者が債権の回収を確実にするために、債務者または第三者が所有する担保となる物に対して、その価値を優先的に債権の弁済にあてることができる物権をいいます。

担保物件の効力・性質

担保物件には、以下のような共通する効力と性質があります。

①優先弁済的効力

担保物件の本来の意義である目的物から優先的に(他の債権者に先駆けて)債権を回収する効力である。先取特権・質権・抵当権には認められますが、留置権は目的物を留置することが主たる目的なので認められません。

②付従性

債権がなければ担保物件も成立することはなく、また、弁済その他の理由で債権が消滅すれば担保物件も消滅するという性質です。

③随伴性

債権が譲渡されると担保物件もこれに従って移転するという性質です。

④不可分性

債権が全部弁済されるまで目的物全部について担保物件を権利行使できるという性質です。

⑤物上代位性

担保物件は、目的物だけではなく目的物の売却代金、賃料あるいは滅失されたときの損害賠償請求権や保険金に対しても権利行使できるという性質です。ただし、これらの金銭が担保物件設定者に払い渡される前に債権者が自ら差押さえをして担保物件設定者の一般財産に混入することを防ぐことが必要です。この物上代位性は、優先弁済的効力をもつ担保物件に認められる性質であるので、留置権には認めれません。

留置権とは

他人の物(動産および不動産)を占有している者がその物に関して生じた債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる担保物件です。(295条)例えば、建物賃借人は建物賃借中に建物の修繕のため必要費を支出した場合には、その必要費の償還を受けるまで、留置権に基づき当該建物の返還を拒否できます。ただし、留置権に基づき建物の返還を拒否している場合に、当該建物に引き続き居住することによる利益(賃料相当額)は、不当利益として目的物の所有者(建物賃貸人)に返還しなければなりません(判例)。なお、債権が弁済期にないときは留置することができず、占有が不法行為によって始まったときは適用されません(295条1項但書、2項)。債権を担保するために他人の物を留置していても、それとは関係なしに債権の消滅時効は進行します。(300条)

留置権者は、留置物より生ずる果実収取権があり、他の債権者よりも優先的に自己の債権の弁済に充当できます(297条1項)。また留置権者には善管注意義務があります。

 

 

 

用益物権の地上権、永小作権、地役権、入会権

用益物権とは、一定の目的のために他人の土地を使用または収益する

ことができる権利です。 用益物権には地上権、永小作権、地役権、

入会権があります。

1・地上権

他人の土地において建物などの工作物を所有したり、竹木を所有したり

する目的で、他人の土地を使用する物権をいいます(265条)。

設定行為によって地上権を取得するのが一般的ですが、時効によって取

得することもあります(163条)。また、法定地上権(388条)のように法律

の規定によって取得することもできます。地上権の性質は、地主の承諾

なしに自由に譲渡することができる。原則として地代を支払うが、無償

の地上権もありうる(266条)。他人の土地の空間の一部または地下の一部

に、工作物を所有する目的で利用するために設定することができる。

(区分地上権)(269条の2) 抵当権を設定することができる(369条2項)。

第三者に対抗するためには登記が必要であること(177条)などの性質が

あります。地上権が消滅したときは、地上権者には原状回復義務が生

じるため、工作物などを収去することができます。ただし、地主から

時価相当額を提供して工作物などを買い取る旨の通知があったときは、

原則として拒むことができません(269条1項)。所有権の調整に関する

相隣関係の規定は、地上権に準用されます(267条)。

2・永小作権

永小作権とは、小作料を払って他人の土地を耕作または牧畜する目的

で利用する物権です(270条)。

3・地役権

地役権とは、設定行為で定めた目的に従って、他人の土地(承役地)を自

己の土地(要役地)の便益(通行や引水など)に供する権利です。

地役権の設定は、設定行為だけでなく、要役地の相続や譲渡、継続的に

行使されかつ外形上認識することができるものに限り時効(283条)によ

って取得することもできます。地上権の内容は、設定行為によって定

めます。地役権者は、その定められた内容にしたがって、承役地を利

用することができます。地役権では、第三者に対抗するには登記が必

要です(177条)。地役権は要役地のためにある権利であるので、要

役地の所有者が移転すれば、地役権もそれに従って移転します(付従

性:281条1項)。また、地役権を要役地から分離して譲渡したり、他

の権利の目的とすることはできません。(随伴性:281条2項)

要役地をA・Bが共有するときに、Aだけがその持分のために地役権を消

滅させること、および、A・Bが承役地を共有している場合に、Aのため

にその持分上の地役権を消滅させることことは、ともに不可能です(不

可分性)。

承役地が分割または一部譲渡されたときは、原則として、その各部分の

上に地役権が存在することになります(282条2項)。共有者の一人が時

効によって地役権を取得したときは、他の共有者も地役権を取得します

(284条1項)。したがって、共有者に対して時効の中断をしようとする

ときは、地役権を行使する各共有者に対してしなければなりません

(284条2項)。また、地役権を行使する共有者が数人いる場合、その

うちの一人について時効停止の原因があったとしても、時効は、各共

有者のために進行します。(284条3項)要役地が数人の共有に属する

場合において、そのうちの一人のために消滅時効の中断または停止の

事由が生じたときは、その中断または停止は、他の共有者のためにも

効力を生じます(292条)。つまり、全共有者の消滅時効が、中断ま

たは停止します。承役地が第三者によって時効取得された場合(289

条)や地役権者が地役権の一部だけを行使していると、残りの部分は

時効により消します。(293条)

4・入会権

入会権とは、部落・村落の住民が、山林・原野に入って草を刈ったり、

木を伐採したり、その土地を共同で利用する習慣上の物権をいいます。

(263条、294条) 入会権は登記することができません。

 

 

 

 

一つの物を数人で共有する

一つの物を数人で共同して所有することを共有といいます。各共有者が

持っている所有権の割合すなわち共有者の持分は、原則として平等と推

定されます(250条)。各共有者は、共有物全部について、その持分に応じ

て使用・収益をすることができます(249条)。持分を他人に譲渡すること

もできます。共有物の変更または処分行為(農地を宅地に、家屋の売

却、抵当権の設定など)をするときは、全員の同意を必要とします(25

1条)。共有物の管理行為(共有物を目的とする賃借権の解除や共有宅地

の地ならしなど)をするときは、各共有物の持分の価格に従いその過半

数の同意で決める必要があります(252条)。共有物の保存行為(家屋の修

繕、保存登記、不法占拠者への妨害排除請求など現状を維持する行為)

をする場合は、他の共有者の同意を得ずに、各自単独でできます(252条

但書)。共有物の管理費用その他の負担(税金の支払いなど)は、持分に応

じて負担義務を履行します(253条1項)。共有者が1年以内にその負担義

務を履行しないときは、他の共有者は相当の償金を支払い、その共有者

の持分を取得することができます(253条2項)。

共有物の変更などに関する判例として、以下のものがあります。

①共有者の協議に基づかないで、一部の共有者から共有物の占有使用を

承認された第三者は、その占有が承認した共有者の持分に基づくものと

認められる限度で、共有物を占有使用する権限を有します。

②共有物の処分に関し、共有者の1人が他の共有者の同意を得ずに売り渡

したとしても、その売買契約そのものは有効に成立します。ただし、他

の共有者の持分について、他人の権利の売買としての法律関係が生じる

ことになります。

③共有物が侵害された結果生じた損害については、各共有者が単独で、

損害賠償の請求をすることができます。ただし、損害賠償の額は各共

有者の持分が限度になります。

共有者の一人が、共有物につき他の共有者に債権を有するときは、そ

の特定承継人(持分の譲受人など)に対しても請求することができま

す(254条)。共有者の一人が持分を放棄したときや死亡して相続人がい

ないときは、その持分は他の共有者に帰属します(255条)。ただし、特

別縁故者がいたときは、その特別縁故者への財産分与の対象となりま

す。共有物の分割では、各共有者は、いつでも共有物の分割を請求し

て共有関係を終了させることができます。しかし、共有者間の契約(分

割禁止特約)をすると、5年を超えない限度で分割をしないことができ

ます(256条)。分割禁止特約は更新することができます。分割は、共有

者の協議によるのが原則ですが、協議が調わないときは裁判所に分割

を請求することになります(258条1項)。この場合、現物が分割できな

いときや分割によって著しく価格が低下するおそれがあるときは、裁

判所は競売を命じてその代金を分割することができます(258条2項)。

共有物について権利を有する者および各共有者は、自己の費用をも

って分割に参加することができます(260条1項)。ただし、この分割

の参加を請求したにもかかわらず参加させずに分割したときは、そ

の分割の効力は参加させなかった者に対抗することはできません(2

60条2項)。

 

 

 

 

所有権と相隣関係

所有権とは、自由に物を使用したり、収益を得たり、物を処分したり

する権利をいいます。(206条)土地の所有権は、その土地の上下、

つまり空間や地下に及びます。(207条) 所有権と関連するのが、

相隣関係です。相隣接する不動産所有権について、お互いの利用を調

節するための規定です。これは、土地の所有者が自分の土地を自由に

利用しようとするときに、隣人に迷惑をかけないようにすることです。

相隣関係の規定にはまず、隣地使用権があります。例えば、土地の所

有者が境界またはその近くで堀や建物を築造したり、修繕したりする

ときに、必要な範囲内において、隣地の使用や立ち入りを隣地の所有

者に請求するのが該当します。(209条)ただし、必要な範囲内での

使用に限られるばかりでなく、隣地に立ち入るために隣人の承諾を必

要とし(209条1項)、隣人が損害を受けたときは償金を支払う必要が

あります(209条2項)。次に相隣関係に関連するのは、公道に至るた

めの他の土地の通行権です。他の土地に囲まれて公道に出ることがで

きない土地(袋地)の所有者等は、公道に出るために、その土地を囲

んでるほかの土地を通行することができる権利です。(210条)

他の土地を通行するときは、通行権者のために必要であり、かつ、他

の土地のために損害が最も少ない場所・方法で行う必要があります。

(211条1項) もし損害が生じたときは、償金を支払う必要があります。

(212条) 分割や一部譲渡によって公道に通じない土地をが生じたとき

は、袋地になるかどうか、分割または一部譲渡する者は予見できること

から、袋地の土地の所有者は、公道に出るため、分割の場合は、他の分

割者の土地、一部譲渡の場合は、その譲渡人または譲受人の土地のみを

通行することができます。この場合は償金を支払う必要がありません。

(213条) 最後に相隣関係に関連するのは境界標設置権と囲障設置権

す。境界標設置権は、土地の所有者が隣地の所有者と共同の費用をも

って境界を標示すべき物を設置することできます(223条)。また、

設置および保存の費用は、相隣者が平等に負担します。測量の費用は、

土地の広狭に分担します(224条)。囲障設置権は、所有者の異なる

2棟の建物の間に空地がある場合に、各所有者は共同の費用をもって

囲障を設けることできる権利です。共同の費用は相隣者と平等に負担

することになっています。(228条、225条、226条)

隣地から竹や木の枝が境界線を越えて伸びてきた場合、その竹や木の

枝の所有者に枝を切除させることができます(233条1項)。勝手

に切ることはできません。しかし、隣地から竹や木の根が境界線を越

えて伸びてきた場合は、自らこれを切り取ることができます。

(233条2項)

 

 

 

 

 

占有権について

①意義と効力

占有権は、自己のためにする意思をもって、物を所持することによって

取得します。(180条)占有権は、代理人(占有代理人)によって取得

することもできます。(181条)占有の種類は3つあります。

1.自主占有と他主占有

自主占有は自分自身に所有の意思がある場合であり、他主占有は所有の

意思がないことです。

2.自己占有と代理占有

自己占有は占有者自身が物を所持することであり、代理占有は、本人が

他人(占有代理人)の所持を通して占有権を取得することです。

3.善意占有・悪意占有

善意占有は所有権等の本権がない占有についてのみ認められ、本権があ

ると誤信して占有をしていることであり、悪意占有は本権がないことを

知りながら、占有していることです。

代理占有の成立要件は、占有代理人が物を所持していること、占有代理

人が本人のためにする意思を有していること、本人と占有代理人との間

に占有代理関係があることが成立要件になります。代理占有の消滅原因

は、本人が占有代理人に占有させる意思を放棄したこと。占有代理人が

本人に対して以後自己または第三者のために占有物を所持する意思を表

示したこと。占有代理人が、占有物の所持を失ったことで代理占有は消

滅します。占有権は、登記がなくても第三者に対抗できます。

②占有訴権

占有訴権とは、占有権に基づく物の円満な事実的支配が侵害された場合

にその侵害を排除する権利のことです。占有者がその占有を妨害された

ときに、妨害の停止および損害の賠償を請求して訴える占有保持の訴

(198条)、占有者がその占有を妨害されるおそれがある場合に、その

妨害の予防または損害賠償の担保を請求する訴えをする占有保全の訴

(199条)占有者がその占有を奪われたときに、その返還および損害

賠償を請求する訴えをする占有回収の訴の3つのやり方で侵害を排除

します。占有回収の訴で占有を侵奪した者の特定承継人に対しては、

当該特定承継人が占有侵奪の事実を知っている場合に限り、当該承継

人に対して提起することができます。(200条)なお、占有回収の訴

えにより、占有を回復したときは、占有は消滅しなかったものとみな

されます。(203条但書) 占有保全の訴は、損害賠償の担保を請求

できることに注意すべきです。訴の期間(201条)は、占有保持の場

合は、妨害のする間、または妨害が消滅した後一年以上内に提起する

こと。占有保全の訴の場合は、妨害の危険の存する間に提起すること。

占有回収の訴の場合は、占有を奪われたときから一年以内に提起する

ことなどが訴の期間になります。

 

物権変動について

物権とは、一定の物を直接支配して、利益を受ける排他的な権利の

ことです。この物権が発生し、変更したり、消滅したりすることを

物権変動といいます。物権変動の当事者になろうとするときは、そ

の物件の存在を知ることが必要です。民法では以下の公示方法を定

め、その存在を外部から容易に知ることができるようにしています。

①公信の原則

物権の公示内容を信頼して取引した者を保護するために設けられて

いるもので、公示内容どおりの権利が実際には存在していなかった

としても、公示されたとおりの権利が存在するものとみなす原則で

す。ただし、この原則は、動産の物権変動については認めている

(192条)が、不動産の物権変動については認めていません。つま

り登記には公信力はないことになります。

②物権変動の意思主義

不動産・動産ともに物権変動には、原則として、当事者間の意思表

示だけで足り、登記の移転などの形式を必要としていません。

(176条)例えば、家屋の売買契約を締結した時点で、まだ登記とか

引渡しがなされていなくても、家屋の所有権は売主から買主に移転す

るが該当します。

③物権変動の第三者に対する対抗要件

物権変動により、当事者間ではなく第三者に権利が移動することがあり

ます。第三者に権利が移動した物権に対して、自己の物権であることを

第三者に対して主張するには、対抗要件が必要となります。対抗要件と

は、不動産だと登記(177条)、動産だと引渡し(178条)が対抗要件に

なります。不動産所有権、地上権、永小作権、地役権、不動産先取特

権、不動産質権、抵当権といった不動産に関連する物権は登記がない

と第三者に対抗できないということになります。占有権、留置権、一

般先取特権、入会権は、登記がなくても第三者に対抗できます。

登記により対抗できる第三者の範囲は、当事者および相続人などの一

般承継人以外の者で、登記のないことを主張するにつき正当な利益を

有する第三者とされます。この場合は、善意、悪意は問いません。

④登記がなくても対抗できる者

登記のないことを主張するにつき正当な利益を有しない第三者に対して

は、登記が必要な物権変動に対して、その登記がなかったとしても、自

己の物権であることを主張できます。正当な利益を有しない第三者とは

以下のとおりです。

1 詐欺・強迫によって、登記申請を妨害した者

2 登記を申請する義務を有している者

3 背信的悪意者

4 不法占拠者

5 不法行為者

6 実質的無権利者

⑤二重譲渡と登記

二重譲渡のときは、契約時期の前後に関わらず、先に登記した者が所有

権を対抗できます。(177条)この場合、善意、悪意は問いません。た

だし、背信的悪意者は除かれます。

⑥賃貸不動産の譲渡と登記

他人に賃貸中の不動産を譲り受けた者は、その権利の取得につき登記を

しなければ、賃貸人である地位を賃借人に対抗できません。

 

 

 

時効について

1取得時効と消滅時効

ある一定の事実状態が続いた場合に、その事実状態が真実の権利関係に

合致するかどうかを問わないで、その事実状態をそのまま権利として認

めることを時効といいます。時効は以下2つの種類があります。

①取得時効

一定の時間が経過することによって他人の権利を取得することことで

す。他人の物を、所有の意思をもって、平穏かつ公然に占有すること

によって成立します。時効取得を成立させるためには、無権利者が占

有開始時に、悪意または有過失だった場合は、20年間(家や土地等

を)占有継続する必要があります。または占有開始時に、善意かつ無

過失だった場合は10年間占有継続すれば成立します。所有の意思と

は、所有者と同じような排他的支配を行おうとする意志があることで

す。所有の意思のある占有を自主占有といいます。反対に所有の意思

がない占有を他主占有(賃借権に基づく賃借人の占有など)といいま

す。他主占有だと何年占有したとしても所有権を時効取得できません。

自主占有の場合は、必ずしも本人が現実的に物を支配している直接占有

(自己占有ともいいます)である日必要はなく、他人(例えば賃借人)

を介して間接的に占有している間接占有(代理占有)でもよいことにな

っています。占有開始時に善意無過失であったが占有の継続途中で、他

人の物であることを知って悪意になったとしても、占有開始時で善意で

あるから時効取得は10年で取得できます。

所有権以外の財産権の取得時効にも要件があります。(163条)所有

権以外の財産権とは、地上権、永小作権、地役権(継続的に行使され、

かつ外見上認識することができるものに限る)などのことです。

所有権以外の財産権を取得するためには、自己のためにする意思をもっ

て、平穏かつ公然に行使した無権利者が行為開始時に、悪意または有過

失である場合は、20年間行使を継続する必要があり、また善意かつ無

過失であったならば、10年間行使継続する必要があります。

時効期間の途中で占有を引き継いだ者は、自己の占有期間のみまたは自

己の占有期間に前占有者の占有期間を合算した期間のいずれかの方法で

取得時効を主張できます。前占有者の占有期間を合算するとは、例え

ば、前占有者が悪意で8年間占有し、承継者が善意で12年間占有し

ているときは、悪意の占有者の期間と善意の承継者の期間と併せて主

張できることを意味しています。

②消滅時効(167条)

権利者が権利を有し、かつその行使ができるにもかかわらず権利を行使

しない期間が、以下の場合だったら時効によって消滅します。

1一般債権であった場合は、10年間継続

2債権以外の財産権の場合は、20年間継続

ただし、所有権は消滅時効にかかりません。消滅時効の起算点は、権利

を行使できるようになったときから進行します。(166条)

2時効の中断

時効期間の途中で、権利者が権利を行使したり、債務者が債務を承認す

ることによって、時効期間の進行が中断するをいいます。時効が中断す

ると、これまでの期間の経過が、時効の中断により効力を失うことにな

ります。時効中断事由が終了したときは、再び新しく時効期間が進行す

ることになります。時効の中断事由(147条)は、まず請求がありま

す。請求は、裁判上の請求(149条)、支払督促(150条)、和解

または調停の申立て(151条)、破産手続参加、再生手続参加または

更生手続参加(152条)、催告などがあります。他の中断事由は、差

押え・仮差押え・仮処分(154条)や承認です。催告については、催

告をしただけでは、中断することはできません。催告をした後6ヶ月以

内に、149条~154条の手段をとることによって催告をしたときに

さかのぼり中断します。債務を承認するためには、債務者が相手方の権

利につき、処分の行為能力および権限を有することは必要ありません。

(156条)しかし、管理能力および権限を有する必要です。したがっ

て、未成年者や成年被後見人が単独でした承認は取り消すことができま

す。ただし、被保佐人や被補助人は管理能力および権限を有するので、

単独でした承認は完全に有効であり、時効中断の事由になります。

3時効の遡及効、援用、放棄

時効の遡及効とは、時効が完成すると、時効の効果はその起算日にさか

のぼることです。(144条)取得時効の場合は占有開始時に、消滅時

効は、権利行使できる時に遡及します。

時効の援用とは、時効によって利益を受ける者が、その利益を受ける意

思表示をすることをいいます。したがって、裁判所が時効の完成を認定

するには、当事者(援用者)が時効の援用をする必要があります。

(145条)時効の援用者とは、時効によって直接利益を受けるべき者

およびその承継人と定められています。具体的には、債務者、連帯保証

人、保証人、抵当権付き不動産の取得者などです。

援用の効果は相対的な効果であり、他の援用権者には及びません。

消滅時効完成後に債務などのあることを認めた場合は、例え時効完成の

事実を知らなくても、もはや時効を援用することはできません。

時効の放棄とは時効の利益を受けた者が、その利益を受けない意思表示

をすることをいいます。時効の利益の放棄は、完成した時効または経過

した時効期間についてのみ認められ、時効完成前にあらかじめ時効の利

益の放棄をすることはできません。(146条)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

条件・期限・期間について

1条件

①停止条件付法律行為

転勤したら家を贈与するというような、一定の事実が発生したら

効力が生ずることになる法律行為をいいます。この一定の事実を

停止条件といいます。停止条件付法律行為は、停止条件が成就し

たときからその効力を生ずることになります(民法127条1項)。

②解除条件付法律行為

転勤しなかったら返還することを条件に家を贈与するというような、

一定の事実が発生したら効力を失うこととなる法律行為をいいます。

この一定の事実を解除条件といいます。解除条件付法律行為は、解

除条件が成就したときからその効力を失います。(127条2項)

③条件の成否未定の間における法律行為など

条件の成否が未定である間は、条件が成就したときに生ずる相手方

の利益を侵害することができません。(128条) 条件の成否が未

定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分

し、相続し、もしくは保存し、またはそのために担保を供すること

ができます。(129条)

④条件が成就することを妨げた場合

条件が成就することによって不利益を受ける当事者が、故意にその

条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものと

みなすことができます。(130条)

⑤成就することのない不能の停止条件を付した法律行為

成就することのない不能の停止条件を付した法律行為は、実現不可

能だから、無効になります。(133条1項)

2期限

将来その事実の到来が確実であることを期限といいます。ある事実

の到来する時期が確定しているものを確定期限といいます。到来す

るのは確実だがその時期が不確定なものを不確定期限といいます。

例えば、死亡したら財産を与えるなどが不確定期限となります。

1月10日に代金を支払う約束をしたようにすると確定期限になりま

す。この期限が到来するまでは代金を払わなくてよいことになりま

す。支払う側からしたら期限が到来するまでは払う必要がない利益

があることになります。これを期限の利益といいます。支払う側は、

相手方の利益を害さない限り、この期限の利益を放棄することがで

きます。(136条2項)つまり、期限を早めて代金を弁済することが

できます。

3期間

①期間の起算点

期間が午前零時から始まり場合を除いて、原則として初日は算入しな

いで翌日から計算します。これを初日不算入の原則といいます。

(140条)

②期間の満了点

期間の末日の終了(末日の午後12時の経過)によって満了します。